情個審答申関係

原処分取り消すべき

1.【令和4年度(行情)答申第193号】行政文書ファイル「平成28年度 訴訟代理人指定等」に含まれる文書の一部開示決定に関する件

国土交通大臣が行った行政文書一部開示決定に係る不服審査請求に対して,諮問庁が情報公開・個人情報保護審査会の答申を待たずして不開示部分の一部を開示し,さらに同審査会が諮問庁がなお不開示とすべきとしている部分の一部を開示すべきであると答申した例.

第1     審査会の結論
別紙の1に掲げる文書(以下「本件対象文書」という。)につき,その一部を不開示とした決定について,諮問庁がなお不開示とすべきとしている部分については,別紙の2に掲げる部分を開示すべきである。

 


第3     諮問庁の説明の要旨

3 原処分に対する諮問庁の考え方

(3)一方,その他の不開示部分(文書1,文書2,文書4,文書5及び文書7の「事件番号」,文書9の表題の一行下に記載の内容,「1.本件訴訟の概要」欄(原告氏名除く),「4.本件訴訟の経過」欄)は,改めて検討の結果,開示することとする。

(5)したがって,上記(3)の開示に変更する部分を除き,原処分は結論として妥当である。

 

 第5     審査会の判断の理由

2 不開示維持部分の不開示情報該当性について

(2)上記(1)アないしウの諮問庁の説明について,以下検討する。

イ 

上記(1)イについて,諮問庁は,「2.原告の主張」欄及び「3.被告の主張」欄について,当該訴訟において,被告である国が各当事者の主張のどこに眼目を置いていたかをうかがわせるものであって,個別事件の対応方針を示すものであるなどと主張する。

諮問庁の主張するとおり,被告である国が当事者の主張のどこに眼目を置いていたかをうかがわせる記述であって,個別事件の対応方針を示すものは原則不開示となるべきであると思料するが,その適用は個別具体的に判断されるべきものである。殊に本件に関しては,当該不開示部分を見分する限り,既に結審した訴訟について,当該訴訟の途中経過における指定代理人の変更に関する決裁に伴い,当該訴訟の概要を説明するために作成された文書であって,訴訟に当たっての対処方針等を検討するために作成された文書ではなく,また,不開示部分である「2.原告の主張」欄及び「3.被告の主張」欄に記載の内容については,文書作成当時の原告及び被告の主張を簡潔に取りまとめたものにすぎず,諮問庁が主張するような別件訴訟の参考となるような事項の記載は認められないことから,当該不開示部分が法5条6号ロに該当すると認めることはできず,開示することが妥当である。

 

2.【令和4年度(行情)答申第215号】特定記事に記載の訴訟に係る事件記録の一部開示決定に関する件


第1     審査会の結論
「令和3年7月14日受付第283号で請求した事件に係る記録のうち,原告訴状,原告準備書面(1),原告訴訟進行についての上申書,原告準備書面(2)及び被告国答弁書」(以下「本件対象文書」という。)につき,その一部を不開示とした決定については,別紙に掲げる部分を開示すべきである。

 

第5     審査会の判断の理由

2 不開示部分の不開示情報該当性について

(2)事件番号(上記⑦の関係)

ア 標記の不開示部分は,本件事件の第一審事件番号であると認められるところ,本件対象文書は民事訴訟に係るものであり,民事訴訟事件の記録は「何人も」閲覧請求をすることができるとされている(民事訴訟法91条1項)ことから,事件番号を知ることにより,当該閲覧制度を利用して当該事件の訴訟記録を閲覧することが可能となり,当該訴訟記録に記載された訴訟当事者又は関係者である個人を特定できることとなる。

したがって,標記の事件番号は,原告等の個人識別情報に該当し,法5条1号本文前段に該当する。

イ 次に,法5条1号ただし書該当性について検討する。

(ア)民事訴訟事件の訴訟記録に係る閲覧制度は,裁判の公正と司法権に対する国民の信頼を確保することなどの基本的な理念に基づき,特定の受訴裁判所の具体的判断の下に実施されているもので,その手続及び目的の限度において訴訟関係者のプライバシーが開披されることがあるとしても,このことをもって,訴訟記録に記載された情報が,情報公開手続において,直ちに一般的に公表することが許されているものと解することはできない。

他方,最高裁判所のウェブサイトに現に掲載されている情報については,その掲載の趣旨・目的や個人情報に対する配慮の状況等が情報公開制度と共通するものである限り,当該情報には公表慣行があると解すべきである。

(イ)当審査会事務局職員をして上記(ア)の最高裁判所のウェブサイトに登載された判例検索システムを確認させたところ,本件事件の第一審判決書及び第一審事件番号が同ウェブサイトに掲載されている事実が認められ,これについては,同ウェブサイトを利用することにより,誰でもその内容を容易に検索・閲覧することが可能である上,その検索の結果得られた本件事件の第一審判決書においては,訴訟当事者の氏名が掲載されていないなど,個人情報に一定の配慮がされており,かかる状況に照らせば,本件事件の第一審判決書及び第一審事件番号については,情報公開制度と基本的に共通の趣旨・目的の下に情報を掲載し,個人情報に対する配慮もされているものと認められる。

そうすると,本件事件の第一審事件番号については,公表慣行があると認められることから,法5条1号ただし書イに該当する。

ウ 以上のことから,標記の事件番号は,法5条1号に該当せず,開示すべきである(別紙の番号1に対応する部分)。

(3)訴訟物の価額,貼用印紙の額及び捜査情報(上記②,③及び⑨の関係)

ア 標記の不開示部分は,これらの情報を公にすると,既に開示されている情報等と併せることにより,本件訴訟に係る事情を承知している者等の関係者にとっては,原告等を相当程度特定することが可能となり,その結果,一般的に他人に知られることを忌避すべき,民事訴訟に係る情報が判明することとなり,個人の権利利益を害するおそれがあることから,これらの情報は法5条1号本文後段に該当すると認められる。

イ 上記(2)イ(イ)のとおり,本件事件の第一審判決書については,最高裁判所のウェブサイトへの掲載事実が認められ,掲載されている範囲における判決書の内容について公表慣行があるということができる。

その上で,本件対象文書に記載された訴訟物の価額及び本件事件で問題とされた刑事事件に係る捜査情報については,上記判決書に記載されており,また,貼用印紙の額については,民事訴訟費用等に関する法律(昭和46年法律第40号)の規定により,訴訟物の価額が明らかになればおのずから明らかになるものであることから,慣行として公表されているものと認められ,法5条1号ただし書イに該当する。

ウ 以上のことから,当該不開示部分は,法5条1号に該当せず,開示すべきである(別紙の番号2ないし4に対応する部分)。

 

3.【令和4年度(行情)答申第216号】特定記事に記載の訴訟に係る事件記録の一部開示決定に関する件

第1     審査会の結論
別表に掲げる文書(以下「本件対象文書」という。)につき,その一部を不開示とした決定については,別紙に掲げる部分を開示すべきである。

 第5     審査会の判断の理由
2 不開示部分の不開示情報該当性について

(2)事件番号(上記④の関係)

ア 標記の不開示部分は,本件事件の第一審事件番号,本件事件の控訴審事件番号及び本件事件の附帯控訴事件番号であると認められるところ,本件対象文書は民事訴訟に係るものであり,民事訴訟事件の記録は「何人も」閲覧請求をすることができるとされている(民事訴訟法91条1項)ことから,事件番号を知ることにより,当該閲覧制度を利用して当該事件の訴訟記録を閲覧することが可能となり,当該訴訟記録に記載された訴訟当事者又は関係者である個人を特定できることとなる。

したがって,標記の事件番号は,原告等の個人識別情報に該当し,法5条1号本文前段に該当する。

イ 次に,法5条1号ただし書該当性について検討する。

(ア)民事訴訟事件の訴訟記録に係る閲覧制度は,裁判の公正と司法権に対する国民の信頼を確保することなどの基本的な理念に基づき,特定の受訴裁判所の具体的判断の下に実施されているもので,その手続及び目的の限度において訴訟関係者のプライバシーが開披されることがあるとしても,このことをもって,訴訟記録に記載された情報が,情報公開手続において,直ちに一般的に公表することが許されているものと解することはできない。

他方,最高裁判所のウェブサイトに現に掲載されている情報については,その掲載の趣旨・目的や個人情報に対する配慮の状況等が情報公開制度と共通するものである限り,当該情報には公表慣行があると解すべきである。

さらに,一連の訴訟事件において,事件の審級や種類ごとに複数の事件番号が付されている場合,その一部の事件番号が分かっていれば,当該事件を特定することが可能であると考えられ,そのような中であえて他の事件番号を秘匿することに意味があるとは通常考えられないから,最高裁判所のウェブサイトに掲載されている事件番号に公表慣行が認められる場合には,他の審級等に関する事件番号についても,公表慣行があるというべきである。

(イ)当審査会事務局職員をして上記(ア)の最高裁判所のウェブサイトに登載された判例検索システムを確認させたところ,本件事件の控訴審事件番号及び附帯控訴事件番号については,同ウェブサイトへの掲載事実は認められなかったが,本件事件の第一審判決書及び第一審事件番号が同ウェブサイトに掲載されている事実が認められ,これについては,同ウェブサイトを利用することにより,誰でもその内容を容易に検索・閲覧することが可能である上,その検索の結果得られた本件事件の第一審判決書においては,訴訟当事者の氏名が掲載されていないなど,個人情報に一定の配慮がされており,かかる状況に照らせば,本件事件の第一審判決書及び第一審事件番号について,情報公開制度と基本的に共通の趣旨・目的の下に情報を掲載し,個人情報に対する配慮もされているものと認められる。

そうすると,本件事件の第一審事件番号については公表慣行があると認められ,これに併せて,本件事件の控訴審事件番号及び附帯控訴番号についても公表慣行があると認められることから,法5条1号ただし書イに該当する。

ウ 以上のことから,標記の事件番号は,法5条1号に該当せず,開示すべきである(別紙の番号1に対応する部分)。

(3)訴訟物の価額,貼用印紙の額,認容額及び捜査情報(上記②,③,⑤及び⑨の関係)

ア 標記の不開示部分は,これらの情報を公にすると,既に開示されている情報等と併せることにより,本件訴訟に係る事情を承知している者等の関係者にとっては,原告等を相当程度特定することが可能となり,その結果,一般的に他人に知られることを忌避すべき,民事訴訟に係る情報が判明することとなり,個人の権利利益を害するおそれがあることから,これらの情報は法5条1号本文後段に該当すると認められる。

イ 上記(2)イ(イ)のとおり,本件事件の第一審判決書については,最高裁判所のウェブサイトへの掲載事実が認められ,掲載されている範囲における判決書の内容について公表慣行があるということができる。

その上で,本件対象文書に記載された訴訟物の価額,認容額及び本件事件で問題とされた刑事事件に係る捜査情報については,上記判決書に記載されており,また,貼用印紙の額については,民事訴訟費用等に関する法律(昭和46年法律第40号)の規定により,訴訟物の価額が明らかになればおのずから明らかになるものであることから,慣行として公表されているものと認められ,法5条1号ただし書イに該当する。

ウ 以上のことから,当該不開示部分は,法5条1号に該当せず,開示すべきである(別紙の番号2ないし5に対応する部分)。

 

4.【令和4年度(行情)答申第531号】特定記事に記載の訴訟に係る文書の一部開示決定に関する件

 

5.【令和4年度(行情)答申第532号】特定記事に記載の訴訟に係る文書の一部開示決定に関する件

 

付言あり

 

1.【令和3年度(行情)答申第576号】行政文書ファイル「令和2年度 原発警備」に保存された文書の不開示決定(不存在)に関する件 

海上保安庁第六管区海上保安本部長の行った行政文書不開示決定(不存在)について,原処分は妥当としたものの付言が付された答申.

3 付言
(1)本件は,諮問庁の説明(上記2(1))によると,年度末の令和3年3月までに削除すべき行政文書ファイルを削除し忘れたことにより生じたものである。
文書管理システムからは既に削除済みとのことであるが,結果的にe-Govには実体のない行政文書ファイルが実在するかのように現在も掲載されており,このような文書管理の実態は国民の不信感を招くものであり,今後,慎重かつ適切な文書管理を行うことが強く望まれる。
(2)また,原処分の不開示は上記のような特異な経緯を理由とするものであるが,本件不開示決定通知書には,不開示の理由として「請求のあった行政文書は作成・取得しておらず不存在のため。」とのみ記載されている。当該不開示決定通知書に本件の不開示の経緯等が分かるように記載していれば,審査請求人にとって,本件審査請求を回避できた可能性もあったと考えられることから,処分庁においては,開示請求者が不開示の理由を的確に理解できるように,その内容に応じた理由を不開示決定通知書に適切に記載するよう留意すべきである。

 

2.【令和4年度(行情)答申第79号】特定役職が特定年月日に送受信した電子メールの不開示決定(不存在)に関する件

 

内閣総理大臣の行った行政文書不開示決定(不存在)について原処分は妥当としたものの,不存在に係る理由提示が適切になされていない旨が付言された答申.

3  付言
 原処分における行政文書不開示決定通知書には,不開示とした理由について「本件文書については,該当する文書を保有していないため(不存在)。」とのみ記載されているところ,一般に,文書の不存在を理由とする不開示決定に際しては,単に対象文書を保有していないという事実を示すだけでは足りず,対象文書を作成又は取得していないのか,あるいは作成又は取得した後に,廃棄又は亡失したのかなど,なぜ当該文書が存在しないかについても理由として付記することが求められる。
 したがって,原処分における理由付記は,行政手続法8条1項の趣旨に照らし,適切さを欠くものであり,処分庁においては,今後の対応において,上記の点について留意すべきである。

 

3.【令和4年度(行情)答申第217号】行政文書ファイル「令和元年度暴力団の封じ込めのために各種法令を駆使した事例」に含まれる文書の一部開示決定に関する件

宇都宮地方検察庁検事正の行った行政文書一部開示決定について原処分は妥当としたものの,不開示理由の適切な提示がなされていない旨が付言された答申.

3 付言

原処分の開示決定通知書の「2 不開示とした部分とその理由」は,不開示条項の条文を引き写して記載し,それに該当する部分を不開示としたとするにとどまっており,本件開示決定通知書の記載のみでは,不開示部分に記載されている情報や当該部分を不開示とした具体的な理由が,明確に示されているとはいえない。

本件の場合は,行政文書開示決定通知書に記載された開示する行政文書の名称及び不開示の理由からすれば,不開示の理由を推測することが可能であり,理由の提示に不備があるとして取り消すまでには至らないが,原処分における理由の提示は,行政手続法8条1項の趣旨に照らし,適切さを欠くものであり,処分庁においては今後適切な対応が望まれる。

 

4.【令和4年度(行情)答申第536号】行政文書ファイル「令和2年度尖閣専従船関連」に含まれる文書の不開示決定に関する件

 

答申を待たずして追加開示

1.【令和4年度(行情)答申第353号】行政文書ファイル「特異事案 令和元年度」に含まれる文書の一部開示決定に関する件

出入国在留管理庁長官の行った行政文書一部開示決定に対する不服審査請求について,諮問庁が自ら不開示情報該当性の判断の誤りを認めた事例.

3 諮問庁の考え方

(3)不開示情報に該当しない部分について

上記2(2)クで審査請求人が主張する部分については,慣行により公にされている情報と認められるため,法5条1号ただし書イに該当し,開示すべきである。